Cultivating Communities
ファイブスクエアの事業が始まるのはいつも、出会いから。
一つは、場所との出会い。神戸の街を歩いて、巡り会った物件のバックグラウンドが面白かったり、なにか色気を感じたり。この場所にどういうお店があったらいいのかなって考えて、そのお店でどんな人が過ごすんだろうとイメージして、だったらこういうお店にしたらいいんじゃないかなって、具体的に形にしていく。
もう一つは人、つまりスタッフとの出会い。スタッフと接していて、「この子って周りからはこう言われてるけど、実は別の強みがあるよね」とか、「この子のこういう特性が面白いよね」って思えたとき。周りから見たその人の個性や、本人も気づいていないストロングポイントを活かして、店づくりをする。場所と人がぴったりマッチして初めて、そこで息づくお店の姿が見えてくる。

スタッフもお客様も、売り手と買い手として区別しない。同じ人として見るのが、私たちの考え方です。そのお店は、どんな人が来てくれて、どんな人が過ごす場所になるのか。それを思い浮かべ、イメージをふくらませていくのが、私たちの事業の始め方です。

私たちのコンセプトは「地産外消」。地方には豊かな自然を背景に育まれた、美味しい農産物がたくさんある。一方、都市には食への意識が高く、食材の価値を感じてくれる人がたくさんいる。この二つをつなげて、地方の素材の価値を都市へ届けること。それが私たちが言う地産外商です。
私たちが大切にしているのは、お客様に、まず自分の舌で味わって、感じてもらうこと。食材について知識や理屈を語ることから始めるのではなく、食べるや飲むという原点から始めたい。まず美味しいと思って、そこから背景を知りたくなるっていう本能的な欲求を、もっと大切にするべきだと思っています。
体感があってその後に、背後にある物語を伝えたい。その食材は、どういう環境でどんな農家さんが育てているのか。地域の自然の中で農を営む人の、生活そのものの物語。それが重要だと思っています。
山口県岩国市に、元々は岩国藩の米倉庫を酒蔵にして日本酒をつくってきた、八百新(やおしん)酒造さんという歴史ある酒蔵があります。2025年に八百新酒造さんと一緒に、「N ニュートラル」という日本酒をつくりました。この酒蔵で使用するお米・山田錦をファイブスクエアが育てていることがきっかけです。
「日本酒バル・米屋 イナズマ」を営業するなかで気づいたんですが、お客様に日本酒を楽しんでもらうためには、美味しい日本酒の基準が必要です。でも、そのための基準となるお酒がなかった。基準があってはじめて、それと比べることで、味の違いを話題にすることができます。だから、日本酒を楽しんでもらうためのニュートラル・ポジション、「中央値になれるような日本酒」を開発したんです。

神戸という街は私たちにとって、自分たちを育ててくれた、愛着のある街です。そこに暮らし、働く私たちが、日々情報を得ながら、さまざまな仲間とともに歩んできた場所です。ファイブスクエアには神戸以外から来たスタッフも多いため、ずっと神戸で生まれ育った人たちが「神戸を何とかしたい」という感覚とはちょっと違う角度で、神戸をもっと面白くしたいと思っている気もします。
神戸の魅力は、「決まった形」を持たず、変化しつづけてきたことです。特に近代以降、新しい文化がどんどん入ってきて、めまぐるしく姿を変えてきた、多様性がある街だと思います。今多様性をみんなが重視する社会になってきていますが、さまざまな文化を取り入れ、多様性のある生活スタイルが最初に生まれたのは神戸だと、私たちは思っています。
飲食店で言っても、洋食も、和食も、中華もあって、それらが近い距離で共存して街をつくっています。「自分たちの街はこうだ」とアイデンティティを限定しなかったからこそ、欧米文化と中華の文化、日本の文化が混じり合って独自の魅力が生まれた、ミクスチャー・シティ。このポテンシャルをさらに引き出して、神戸の街をもっと面白くしたいと思っているんです。
私たちファイブスクエアはそんな神戸で、「スキマに彩りをもたらす存在」でありたいと思います。センター街などの明るい場所というより、神戸という街の「スキマ」に注目したい。この都市には、空けておくにはあまりにももったいないような、余白がいっぱいあります。そんな場所で店を営むことで、目的を持って自分たちのメッセージを伝えていきたいんです。スキマであるからこそ、メッセージが埋没せず、直に届きやすいはず。都市の主役になるというよりは、都市のスキマを活用することで私たちは、一人ひとりの人生に余白をもたらす存在でありたい。ファイブスクエアは、それを目的に、行動しつづけるチームでありたいと思っています。
私たちは、リアルな場での直接のコミュニケーションを大事にしています。マネジメント側がメンバーに対して一方通行で意見を言うのではなく、むしろ多様な意見や質問を一元化しないことが、私たちにとっては大切です。合っていようが間違っていようが、話し合いの場では、ぶつかり合う意見や、個々人の声を拾い上げるようにしています。
ここで働くメンバー達は、いわばスポーツ選手のような存在です。自ら動き、改善を繰り返し、良いパフォーマンスを実現する。受動的に「~される」という姿勢ではなく、すべてを自分の意思で能動的に解釈できるようになることが、私たちのスタートラインです。
投げられたボールを「受け止めさせられた」のか、それとも「自分で受け止めた」のか。起きている出来事は同じでも、その受け止め方次第で、意味はまったく別のものになります。ミットに入った瞬間、それを「やらされた一球」と感じるのか、「自分で取りにいった一球」と感じるのか。その差は小さく見えて、実は世界線を180度変えてしまうほど大きい。
仕事にも、同じことが言えると思っています。「自分の意志で、自分でキャッチした」という姿勢があるかどうか。一般的には、他人から何かをやらされることを「仕事」と呼びがちです。でも私たちはむしろ、自ら受け止めることこそを「仕事」と呼びたい。だからこそ、「自分商店」を構える人が集うことが、ファイブスクエアにとって何より大切だと考えています。考え込んで動きを止めるのではなく、どうすればお客様にもっと喜んでもらえるかを自分で考え、行動し、改善を重ねていく。それが、私たちのポリシーです。